テーマ105 部下に継続的に熱意を持って仕事をしてもらう
〜モチベーションの経営理論から学ぶ管理職者の実務〜
■モチベーションとは「人を特定の行動に向かわせ、
そこに熱意を持たせ、持続させる」もの
リーダーシップと対のような関係にあるのが
モチベーションといえます。
管理職者の役割の一つは、
部下のモチベーションの向上となります。
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ニューヨーク州立大学ビンガム校の
心理学者バーナード・バス氏をはじめ、
経営学、心理学の学者の間では、
モチベーションの定義は、下記のようになります。
・モチベーションとは
「人を特定の行動に向かわせ、そこに熱意を持たせ、持続させる」もの。
人の行動に影響を与えるもの。
・行動への影響の与え方3要素
@行動の方向性
A行動の程度(活力・規模)
B行動の持続性
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上記のモチベーションの定義からいっても管理職者は、
部下の方に魅力的な目標を与え、シェアし、
部下の方が、熱意を持って継続的に仕事に取り組める
環境をつくることが仕事となります。
■部下には内面から湧き上がるモチベーションを与える
経営学上、モチベーションは次の2種類に分けられます。
1.外発的動機(extrinsic motivation)
報酬・昇進など、「外部」から与えられる影響で
高まるモチベーションのこと。
2.内発的動機(intrinsic motivation)
純粋に「楽しみたい」「やりたい」といった、
内面から湧き上がるモチベーションのこと。
これまでの経営学における実証研究によりますと、
「外発的動機よりも内発的動機の方が、
個人の行動へのコミットメントや持続性を高める」
ということが、
ほぼ学者の方のコンセンサスとなっているとことです。
実務的には、管理職者として、
部下の方に目標や仕事を与えるときは、一方的な押し付けではなく、
部下の方の希望を踏まえながら上司として目標や行うべき仕事を示し、
部下の方と充分シュアし合い、
部下の方が、納得して目標や仕事に取り組んで
もらうようにすることが重要となります。
また、目標を与えた後は、放置するのではなく、
部下の方の仕事の進捗管理を計画的にきちんと行うことが重要です。
仕事の能力アップのための指導や
今行っている仕事の助言を行う中で、
一生懸命まじめに取り組んでいること自体や仕事の結果を認め、
ほめて上げることを繰り返すことが必要です。
上司のほめ言葉により、部下の方は、少しずつ心が変化してきます。
小さな心の変化の積み重ねが、
内面から湧き上がる大きなモチベーションへとつながります。
■最新のモチベーション理論と管理職者の役割
現在の代表的なモチベーション理論は、
アメリカメリーランド大学の心理学者エドウイン・ロック氏が、
1960年代に提唱しましたゴール設定理論といわれております。
多くの企業で行われております
目標管理制度の基にもなっている理論です。
ゴール設定理論の内容は、下記のようなものです。
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・人は、自身の目的を実現するために働く意思を持つ
・人はより具体的で、より困難・チャレンジングな
ゴールを設定するほど、モチベーションを高める。
・人は、達成した成果について明確なフィードバックがあるとき、
よりモチベーションを高める。
ゴール設定理論は経営学において、
多くの実証研究で証明されております。
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最新のモチベーション理論といわれているのが、
アメリカテネシー大学の社会心理学者ダニエル・バトソン氏が
1980年代に提唱した
プロソーシャル・モチベーション(PSM)理論です。
プロソーシャル・モチベーション(PSM)理論の内容は、
下記のようなものです。
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・プロソーシャル・モチベーション(PSM)とは、
他者視点のモチベーションのこと。
・PSMが高い人は関心が自身だけでなく他者にも向いており、
他人の視点に立ち、他人に貢献することにも
モチベーションを見出す。
・「社会貢献」のような大きなものではなく、
「顧客視点に立つ」、「取引先の視点に立つ」、
「部下の視点に立つ」といった、身近なものを含む。
・プロソーシャル・モチベーション(PSM)と
内発的動機は、補完関係にある。
PSMと内発的動機が同時に高い人は、
「他者に貢献することを、みずからの楽しみと感じる」。
・「PSMと内発的動機が高い人ほど行動の持続性が高く、
パフォーマンスや生産性も高い、個人の創造性を高める効果もある」
という実証研究の結果がでている。
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プロソーシャル・モチベーションからは、
例えば、仕事はお金を稼ぐためだけではなく、
もっと幅の広い視点を持って働いた方が、
生産性や創造性の高い仕事をするためには
必要ということが分かります。
部下の方のモチベーションを高め、
生産性や創造性の高い仕事をしてもらうためには、
管理職者として、広い視野に立った、
目標やビジョンを示すと共に、部下の方にも、
広い視野に立った目標、ビジョンを持ってもらい
仕事に取り組んでもらうことが必要です。
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